産着の柄に込められた意味は?
産着の柄に込められた意味は? 


産着には男女共に様々な柄が使われていますが、ひとつひとつの柄には意味があり、「赤ちゃんが健やかに成長しますように」という願いが込められています。
このページでは男の子・女の子・男女共通で使われている柄について説明していきます。ぜひ産着を選ぶ際の参考にしてみてください。



男の子の産着の柄



【鷹(たか)】



男の子の産着に使われるメインの柄の中で、最も多く見られる柄です。
鷹は大空を高く舞い上がり、遠くを見渡し、地上にいる小動物を鋭い爪で捕えます。はるか遠い先まで見渡せる「眼」は「先を見通す力・本質を見抜く力」という意味を、獲物をがっちりと捕らえる鋭い爪は「幸運をしっかり掴んで離さない力」という意味をそれぞれ表し、それらの力が備わった子に育ちますようにという願いが込められています。
また、鷹は利口な鳥で、昔は「鷹狩り」という身分の高い人たちの間で行われていた狩猟にも使われていました。「鷹狩り」は権威の象徴でもあったことから、男の子の出世や大成を願う気持ちが込められています。



【兜(かぶと)】



兜もメインの柄で多く使われている柄です。
兜は戦において、武士が頭部を守るために着用していました。男の子の大切な頭を守る兜には、邪気や災厄から守り、健やかな成長を願うお守りの意味があります。
また、豪華な飾りのある兜は権威と高い地位の象徴であり、武将の中でも身分の高い人だけが着用を許されていたことから、男の子の出世や、一家の長として立派に育ってほしいという願いも込められています。



【龍】



龍は伝説や神話に数多く登場する想像上の生き物です。麒麟、鳳凰、亀とともに四霊の一つとして尊ばれ、中国では縁起のいい動物とされてきました。水中か地中に棲むとされることが多いそうですが、天に高く昇って自由に飛翔する「昇り龍」の姿や、中国では皇帝のシンボルとされていることから、男の子の出世や飛躍を願う意味が込められています。
そして干支にも登場する龍は、辰年生まれの男の子に縁起が良い柄として選ばれることも多いようです。



【打出の小槌】



打出の小槌(うちでのこづち)は「宝尽くし」と呼ばれる柄の一つでもあり、おめでたい柄です。七福神の大黒様がもっていることでも有名で、欲しい物や願い事を唱えながら振ると様々なものが出てくることから「将来願いが叶い、赤ちゃんが一生モノやお金に困りませんように」という願いが込められています。
また、一寸法師が打出の小槌によって大きくなり立派な青年になったことから、赤ちゃんがすくすくと成長することを願う意味もあります。



【軍配(ぐんぱい)】



軍配と言えば相撲の行司さんが持っている道具を連想されるかと思いますが、あの道具は「軍配団扇 (うちわ) 」というのが正式名で、かつて戦国時代の武将が戦で自軍を指揮するのに用いていました。そして「軍配」の本来の意味は、戦の際に方角や日時を見極め、軍陣を適切に配置することを言います。
軍配を持って軍を適切に動かすリーダーのように、知力・決断力・行動力を持ち、先頭に立って人をまとめ動かせるような人に成長してほしい。また、「勝負の采配を決定づける」という意味からも、自分の力で采配を振るい、道を誤ることなく進んでいってほしいという願いが、この模様には込められています。



【宝船】



宝船は七福神が乗る帆掛け船で、米俵や金銀、宝石などの宝物を積んだとてもおめでたい船です。帆には様々な縁起の良い一文字がかかれています。
宝船は新しい旅立ち、門出を表し、赤ちゃんのこれからの人生の希望の門出を祝う意味が込められています。また、沢山の米俵や宝物が積んであることから、赤ちゃんが一生モノに困りませんようにという願いも込められています。



【鯉(こい)】



鯉が滝を登る姿は立身出世の象徴。「登竜門」という語源にもなった「黄河の上流に竜門という激流があり、その竜門を登りきった鯉は竜になる」という中国の伝説が由来です。
鯉の滝登りのように、赤ちゃんが人生の苦難や試練を乗り越えて、たくましく成長しますようにという願いが込められています。




女の子の産着の柄



【御所車・花車】



御所車(ごしょぐるま)は、平安時代に京都御所の周辺で使われた貴族の乗り物である牛車の別称で、「玉の輿に乗れますように」との願いが込められています。この御所車にたくさん花を飾ったのが花車で、牡丹や菊、桜など四季折々の花々は、多くの人々の祝意を表しています。
気品あふれる御所車とあでやかな花車は、女の子の美しい成長と人々からの祝福を願う意味が込められています。吉祥文様の一つでもあり、その見た目から、富や華やかさを表す柄として用いられてきました。
また初着に限らず、着物を代表する柄として礼装の着物や帯にも使われてきました。



【鞠(まり)】



平安時代に流行した蹴鞠(けまり)は貴族の遊びだったことから、高貴さと気品を表しています。
丸い毬には、「何事も丸く収まりますように」「丸々と健やかに成長しますように」という願いが込められており、子供のすこやかな成長や幸せな人生を表す柄です。毬は子どものおもちゃであることから子どもが寂しくないようにお守り代わりの意味もあり、子どもの頃だけでなく、成人したとき、結婚したときなど、女性の人生を生涯にわたって守ってくれる魔除けの意味も込められています。
また、長い糸が使われていることから、良縁が来るようにといった願いを込めることもあります。円満な家庭を築けるようにとの願いを込め、手毬柄の着物をお守りとして嫁入り道具にするという習慣もあるそうです。



【鈴】



昔から「音」には獣や魔物などを追い払い、神や縁起のよいものを引き寄せる力があると信じられてきました。祈祷や神楽などでも巫女さんや演者が鈴を手にしているのを見ることができますね。
神社の拝殿で大きな鈴を鳴らすのは、音を鳴らして神様を呼び、「この子をよろしくお願いします」と、神様にお願いするためです。
お宮参りの産着の柄に鈴が描かれているのは、神様に呼びかけて祈りや願いを届けることを意味します。鼓の柄にも鈴と同じ意味合いが感じられます。



【牡丹・芍薬】



牡丹(ボタン)と芍薬(シャクヤク)の柄には、美しさや気品、慎ましさのある女性に育つようにという願いが込められています。日本では昔から、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花」という言葉があり、花弁が大きく多いため、高貴さや富貴さ、女性の美しさを表現する花といわれてきました。
牡丹はまさに豪華絢爛、百花の王とも言われ、小さな丸いつぼみから大輪の美しい花を咲かせるのが由来の理由です。
芍薬は牡丹よりやや小ぶりですらりと真っすぐ伸びるので、端麗なその姿は和服美人を連想させます。
花車に載せられたり、背の鞠や鈴、鼓といったメイン柄と寄り添うデザインで多用されています。



【桜】



古くから日本人に愛されてきた日本の国花である桜は、五穀豊穣の神が宿っている木で、さくらの「さ」は稲、「くら」は神が宿る座を意味しています。
年度初めの春に咲くことから、入進学、入社など、物事の始まりにふさわしい縁起の良い柄だとされており、季節を問わず身につけることができます。赤ちゃんの誕生は新しい人生の始まりで、ご家族にとっても新たな1ページの始まりです。そのため、お宮参りに欠かせない柄として多く好まれています。
また、いっせいに咲き誇る姿から「繁栄」「豊かさ」という意味も持っています。



【椿(つばき)】



椿は日本が原産の木です。梅が中国から渡来するまでは、最高の吉祥木とされていました。
平安時代には、油や化粧品、そして不老長寿の薬として大切にされていました。また、最も高貴な色とされていた紫を染める媒染剤として椿の灰汁を使用していたこともあり、貴族の間では高貴な花、神聖な花として扱われていました。古来、椿は吉祥木、また邪気を寄せ付けない厄除けの呪木(じゅぼく)とされており、吉祥文様の一種として着物の柄にも取り入れられるようになったのです。
椿は季節としては春を表す花ですが、吉祥文様、厄除け文様として、一年中身に着ける事の出来る文様だといえます。



【菊(きく)】



菊は長寿の象徴であるほか、不老不死、無病息災、心身の安定、浄化、厄除けなど、様々な意味を持つ吉祥文様、邪気を払う縁起物として日本人に親しみ、尊ばれてきました。その美しい形とかぐわしい香りから、「気高さ」を表す柄でもあります。
菊の放射線状に整った花弁が太陽を思わせることから、花柄の中で最も位の高い、とても高貴な花として用いられ、皇室の御紋にも使われています。
菊は秋の花とされていますが、季節を問わず用いることができます。



【兎(うさぎ)】



昔から、うさぎは月の使いで「ツキを呼ぶ」と信じられてきた縁起の良い動物です。飛び跳ねる姿は跳躍・飛躍を表し、前脚が短く後脚が長いので坂を上るのが速い事から、物事がトントン拍子に進むという意味があります。また、うさぎの長い耳は福を集めると言われています。
干支にもなっている動物なので、うさぎ年の赤ちゃんにも人気がある柄のようです。



【鶴】



「鶴(つる)は千年、亀は万年」という言葉があるように、鶴は「長寿」「生命の豊かさ」を意味する縁起の良い鳥です。また、鶴は一度夫婦になると一生離れることなく連れ添うという特徴から、結婚式で着用する打掛、白無垢、留袖などにも使用されることが多い柄です。
これらの事から鶴の柄が使用された産着には、赤ちゃんが長生きしますように、将来良縁に恵まれますように、という願いが込められています。



【蝶】



蝶は芋虫からさなぎ、そして美しく空を舞う成虫の蝶へと成長していきます。このように姿を変えながら華やかに成長していく様から、女の子が美しく健やかに成長しますようにという願いが込められています。
また、古くから蝶には「立身出世」や「不死の象徴」という意味があり、戦場での加護や家系がが長く続くように、と武士が好んで使用していた柄でもあります。




男女共通で使用される柄



【束ね熨斗】



熨斗(のし)は「伸し鮑(のしあわび)」の略称で、伸ばして平らにする「伸し」という言葉に由来しています。
古来から鮑は不老長寿の象徴であり、朝廷に献上されるほど貴重な高級食材として重宝されてきました。そのことから、のし鮑はおめでたいものとして進物(しんもつ)や引き出物に添えられていました。そして、のし鮑を細長く帯のようにした模様が「熨斗模様」となり、その熨斗を束ねたものが「束ね熨斗」です。
たくさんの熨斗を束ねた柄は、多くの人々から祝福を受けるよう、そしてその幸せを周りの人と分かち合うようにという意味が込められています。
吉祥模様の代表的な束ね熨斗は、慶事の着物柄としても幅広く使われており、長寿の象徴であることから男の子、女の子のどちらにも使われています。



【松竹梅】



松竹梅は、慶事・吉祥のシンボルとして松・竹・梅の3つの植物を合わせたもののことで、日本でも古くから祝い事に欠かせないものとして使われてきました。もともとは中国の「歳寒三友」が日本に伝わったもので、「清廉潔白・節操」を表し、逆境にあっても節操を守る例えとされ尊ばれています。
また、忍耐力や生命の誕生を意味するともいわれており、結婚や出産に適した柄であるといえます。

【松】
砂地や岩だらけの厳しい環境でも育ち、真冬の厳しい寒さの中でもしっかりとした深緑の葉を付けます。
【竹】
成長が早く、寒さにも負けずまっすぐと天に向かって伸び、1年を通じてみずみずしい青い葉を付けます。
【梅】
厳しい冬を耐え忍び、冬の終わりにどの花よりも早くつぼみを開いて花を咲かせます。「忍耐力」や「美」を表す、美しく力強い花です。





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